いちごちゃんとれもんちゃんログ
Twitterより
いちごちゃんとれもんちゃんは中学生くらい
いちごちゃん…天真爛漫で、物凄くかわいらしくて、ハーフっぽくてお人形さんみたいだけど、すこしわがままで小悪魔。おもわせぶり。不思議ちゃん。所有欲が強い。ごはんを食べるよりお菓子を食べていたい。でも泣き虫。運動はできないけど勉強ができる。映画や美術、おしゃれが好き。
れもんちゃん…ふつうの女の子。故に、ネガティブで神経質。わりと器用。運動ができるけど勉強はできない。でも読書が好き。体重を気にして、お菓子は控え中。人前で泣くのがいやで、その所為で泣くことができず、唇を噛んで耐える(ちなみに唇はかさかさ)。
れもんちゃんはいちごちゃんに、可愛さ余って憎さ100倍な気持ちを抱いていたらいいな。ふたりはセーラーが似合うかもしれない。丈の長いスカートとか。いちごちゃんはちょっと短くてもいいな。いちごちゃんは小柄で細けど、れもんちゃんは背が高くてふつう体型。
2月2日
おひるねしようか っていちごちゃんが笑う。真っ赤なくちびるが つるりと笑う。わたしも とてもねむい。れもんちゃんねむいね ねむいねいちごちゃん わたしたちはねむる。
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れもんちゃん、足が冷たいの ソファーに座ってこっちを見ながら、いちごちゃんが言う うん、冬だものね れもんちゃん、さむくないの? さむいよ そう呟いてわたしが首を竦めると、小首を傾げる彼女の裸足の足が、冷たい床にそっと触れた あたしのマフラー、貸してあげる え…でも、いいの
いいよ。つかってよ いちごちゃんが差し出すその真っ赤なマフラーに、わたしは戸惑ってすこし笑った いちごちゃんは笑わずに、マフラーをわたしの首にそっとかける いちごちゃんからはあまいあまいにおいがして、わたしはそのにおいをそっと、くちに含む ああ、あまいね なにが? …ひみつ。
2月3日
鬼は外、福は内 れもんちゃんがぽろぽろと言葉と豆をこぼした 鬼のいない節分ってなんだかさみしいわ あたしはアスファルトを跳ねる豆を見ながら言う
れもんちゃんは指先を叩きながら 渡る世間に鬼は無し と呟いた そういうことなの そういうことだよ れもんちゃんがひとつだけ余った豆をぽりぽりと噛んだ じゃあ鬼はどこにいるんだろうか あたしは鼻歌をうたった れもんちゃんは空を見ながら、豆をのみ込んでいる
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右眼がいたいの いちごちゃんがほろほろと泣いていた 見せて わたしはそうっといちごちゃんの眼を覗きこむ ぬれた瞳の奥に星がいた ぱちぱちとはじけながらいちごちゃんを苦しませる星 それでもうつくしい星 こすらないで いちごちゃんが指先を右目にのばすので わたしはその指をにぎる
じっとしていて 指先に力がなくなったところで 星の奥にみつけたちいさな埃が 澄み切った涙の海に流れていくのを見た ああよかった、みつけたよ まだいたいわよ 眼を閉じて いちごちゃんは素直にまぶたをぎゅうと閉じる 目尻のくぼみに流れた埃は しずかにわたしの指に着地した
れもんちゃん取れたの 取れたよいちごちゃん いちごちゃんは嬉しそうに笑ったけれど 頬に零れた星のおかげでそれが とてもはかなく見えた わたしの指先の埃は もうすっかりと乾いて ふてぶてしくわたしの指にはりついていた
2月7日
ひいふうみい いちごちゃんは鼻声で飴を数えていた いつむうなな どうしてそんな数え方なの べつに…いみないよ かぜっぴきのいちごちゃんはすこし機嫌が悪かった 飴はあまったるいミルクキャンディ ななつの飴がいちごちゃんの掌で転がる 喉がいたくて飴がたべられないの か細い声だった
2月14日
あめだね れもんちゃんは窓のそとを見ながらいった あたしはくちびるのなかに飴を含んでいたから ちょっとめんくらって喉を張る れもんちゃんはこっちを見なかった あめだあ そしてもう一度、確かめるみたいにいった
飴の甘味を唾液にまぜて 口に溜めこみながら あたしは通学カバンから小さな袋をとりだした ねえれもんちゃん なあにいちごちゃん チョコレート、あげる えっ れもんちゃんはやっとこっちを見た 髪の毛の端が 湿気のせいですこしうねっている そのまっ黒を見ていると なんだか変な気分になる
つくったの れもんちゃんは本当にびっくりしたみたいだった あたしは上履きをこすりあわせながらうんという なんだかすこし恥ずかしかったけど 昨日れもんちゃんのことを考えながらつくったこの小さなチョコレートケーキを 今あげないでいつあげるの とおもったのだ
ママはあたしが男の子にあげるとおもっていたみたいだけど あたしは男の子とお話するよりれもんちゃんといるほうがすきだから きっとそういうことなんだとおもう れもんちゃんはとてもとても丁寧に袋を手に取って 宝石にさわるみたいにケーキを取った ぽろぽろと スポンジが机におちてゆく
おいしいよいちごちゃん れもんちゃんはもぐもぐと口を動かしながらいった とってもおいしい ほんと? ほんとだよ、食べてないの 味見しなかったの じゃあ、食べて れもんちゃんは食べかけのケーキをこちらに差し出した 細くてちょっと乾燥した指先にうすい爪がぴったりと張り付いていた
小さくなっていた飴をあわてて噛み切って 呑み込んでから その指にそっとくちびるを近付けた ふわり と 雲を食べているみたいな触感がして すぐにチョコレートのあまいにおいが鼻をぬける おいしい ね、そうでしょ れもんちゃんはあたしの顔をみながら笑った
机に落ちたスポンジのかけらでさえその指で摘むれもんちゃんの スポンジよりやわらかくてチョコレートよりあまい笑顔が あたしのすべてなんだとおもった 帰ってママにお礼を言わなくちゃ あたしが心の奥でそうつぶやくと れもんちゃんは すてきな雨の日 と歌うように囁いた
2月25日
いちごちゃんのくちびるがすこし、濡れていた わたしはそっと指先で 窓に張り付いていた水滴をはじく いちごちゃんは空を見上げて 春ね とつぶやいた マフラーを巻いた首筋があつくて もう冬が背中を向けていることを知った
ねえれもんちゃん春になったら、 いちごちゃんはそこまで言うと黙った なあにいちごちゃん ううんなんでもないの、ただ、これからもなかよくしてね あたりまえだよ! わたしは驚いて眼を見開いてから笑った いちごちゃんは泣きそうな顔をしながら笑った いちごちゃんには春がよく、似合う
3月12日
ねえれもんちゃん、れもんちゃんが息苦しくなったらあたしがキスをしてあげる いちごちゃんは眼をつぶっていた そんなこと、したらよけい苦しくなるんじゃなあい? わたしは少し笑った いちごちゃんは眼をつぶったままで 一緒に苦しくなってみたいの と呟く 心臓だけがどきどき鳴った
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